刑事事件11~別件逮捕について~

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弁護士の佐藤です。

前々回より前の冤罪事件のお話では、度々別件逮捕という言葉がでてきました。

そこで、本日は、別件逮捕について簡単に説明いたします。

本件取調べ目的で、逮捕の要件を満たす他の事件(別件、通常は本件より軽微な事件)について被疑者を逮捕すること、またはそのための手法のことを言います。

つまりどういうことかというと、ある人に殺人の嫌疑がかかっているがなかなか逮捕の決め手がなく、その人に捜査機関が張り付いて、軽微な犯罪、例えば道路交通法違反などの罪で逮捕勾留し、その逮捕勾留期間に殺人の取り調べをする場合を言います。

本来逮捕勾留期間は、前にも述べた通り決まっており、このような別件逮捕が許されると、勾留期間を定めた法を逸脱する行為であり、また、自白を強要につながるおそれがあります。しかし、冤罪事件で散々述べてきましたが、古い事件では、このような別件逮捕が当たり前のように行われてきました。

別件逮捕が違法となるか否かは、学説が対立しているところであり、ここでは省略しますが、なお、逮捕・勾留が、違法な別件逮捕・別件勾留とされた場合には、違法な逮捕・勾留時に基づき得られた証拠が違法であるとされ、証拠能力を否定されることになります。これを、違法収集証拠排除法則といいます。

別件逮捕は、何も古い事件の話だけではありません。

平成21年3月3日の大阪高等裁判所の判決では、求人情報誌を持っていたのに「職業に就く意思がないままうろついた」として軽犯罪法違反容疑で奈良県警に現行犯逮捕され、その後、別件の覚せい剤取締法違反容疑で起訴された事件で、「このような捜査の経緯から見ると、捜査機関の関心が、専ら又は主として覚せい剤の嫌疑にあったことはほぼ明らかであるといえ、本件逮捕は,所持品検査の段階で収集された資料である被告人の前科と注射器所持の事実のみでは、覚せい剤事犯での逮捕を基礎付けるだけの嫌疑はいまだ不十分であるために、強制採尿及び鑑定を経て、覚せい剤使用による逮捕状の発付を得ることとその間における被告人の身柄確保を主要な目的とし、そのために、別罪での逮捕という形式を利用したものであって,いわゆる別件逮捕としても違法であると評価すべきである。」とし、別件逮捕でえた証拠の証拠能力を否定し、被告人を無罪としました。

以前私が担当した刑事事件でも似たようなことがありました。まだまだ、古き悪しき時代の流れがあるのが残念です。

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