刑事事件10~刑事補償について~

019

弁護士の佐藤です。

前回の冤罪事件で、少し刑事補償についてお話しました。そこで、本日は、刑事補償について、もう少し詳しくお話をしようかと思います。

これまでお話してきた冤罪事件については、誤判に巻き込まれた人が受ける精神的、社金的、財産的ダメージの大きさは、想像を絶するものがあり、誤判が是正されなかった場合はもちろんのこと、是正された場合でもその傷は一生癒しがたい深さで残るものです。さらに、誤判で失われるのは、人生そのものであり、人間としての誇りそのものだからであり、しかもその傷は、本人だけでなく家族にもおよぶものです。

しかし、驚くべきことに、誤判の損害に対する賠償はきわめて不十分な現状にあるといえます。誤判に対する賠償の主な制度としては、国家賠償法による国家賠償と、刑事補償法による刑事補償との二つがある.

刑事補償は、無罪判決が下ると、警察、検察、裁判所に故意または過失があるか否かには関係なしに、身柄を拘束されていた日数に一定の金額を掛けた金額を支払うシステムになっています。刑事補償法に規定があり、その補償額は、一日当たりの金額が、現在は1000円以上1万2500円以下の範囲内で裁判所が決めるものとされています。

この一日当たりの金額は、常用労働者の一日あたり平均賃金を下回っており、低額であるのは明らかです。また本人の精神的損害や家族の精神的、財産的損害はまったくカウントされておりません。

そこで、その足りない分をカバーすべきなのは国家賠償であるといえます。

国家賠償法によれば「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたとき」には、国または公共団体が賠償責任を負うとされています。

ところが、再審無罪になった事件で国家賠償が認められたケースはこれまでにありません。冤罪による損害の救済に対し、国家賠償法はまったくといっていいほど機能していないのです。

それは、再審無罪となった場合でも、捜査、起訴、公判における警察や検察の職務行為がただちに違法になるのではなく、それがおこなわれた時点において合理的根拠が存在しなかった場合にはじめて違法となると解釈され、これまでの再審無罪事件に関しては、合理的根拠があると認定されているからです。

しかし、裁判所が再審無罪を言い渡した以上、また、捜査機関のねつ造まで認定しているケースでも、国の故意、過失を認めないことは甚だ不可解というほかありません。救済手段であるにもかかわらず、故意過失の認定を厳しくすることには疑問です。

今後再審決定されている事件がどうなるかわかりませんが、刑事補償ではまかないきれない損害の補填という意味で、国賠が認められやすくなることを願います。

ページの先頭へ