凶器準備集合罪とプラカード

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弁護士の佐藤です。

 

さて、本日も前回に続き、凶器準備集合罪の凶器性が問題となった判例をみていきたいと思います。

 

前回がダンプカーであったのに対し、今回は角材の柄付きプラカードです。

 

事案は、昭和43年1月アメリカ原子力空母エンタープライズ佐世保寄港に際し、三派系全学連中核派により企図された闘争において、判示のようなプラカードを所持した学生集団が佐世保に赴くべく国電飯田橋駅不近に至つたとき、警備にあたつていた機動隊との間におこつた衝突が起訴されたというものです。

 

これはいわゆる飯田橋事件というわれているものです。

 

この点、東京地方裁判所昭和46年3月19日判決は、

まず、凶器について、

「兇器準備集合罪にいう兇器には用法上の兇器も含むと解すべきであり、用法上の兇器とは人を殺傷するに足る器具で、社会通念に照らし人の視聴覚上直ちに危険性を感ぜしめるものをいうと解せられる。」

 

とし、さらに、

「弁護人は、兇器準備集合罪の立法審議過程において、プラカードの兇器にあたらないことは確約されており、本件もプラカードであるからその兇器性を判断するまでもない旨主張するが、法律の解釈にあたって、立法上の段階において考慮された事情を十分に斟酌すべきことはいうまでもないが、またこれに尽きるものでもなく、弁護人の主張する事情が存するからといって、プラカードとしての性質を有すれば、一切の兇器性が排除されるものと解することはできず、問題物件ごとにその性質・形状などを十分吟味してその兇器性の有無を判断すべきである。」

としました。

そして、本件については、

「そこで、本件の『角材の柄付きプラカード』が前記の兇器にあたるかどうかを判断するに、まず、本件の柄の部分である長さ約一二〇糎、太さ約三・五糎×約四・五糎の角材が用法上の兇器にあたることは明らかである(最高裁判所第一小法廷決定昭和四五年一二月三日裁判所時報第五五九号二頁参照)。ところが、本件物件は右のごとき角材の一端に、厚さ〇・二七糎、縦約三五糎、横約四五糎のベニヤ板に『エンタープライズ実力阻止全学連』または『エンタープライズ寄港阻止』などと書いた紙面を貼りつけたものを釘で取り付けたものであって、一見してプラカードとしての機能を有することは否定し難く、前記第四、(二)のとおり、柄の部分の角材を闘争の際に使用する意図のもとに全体としてプラカード様に偽装された疑いのあるものではあるものの、学生集団が一五日午前八時二〇分ころこれを所持して第一校舎から校庭に出て来て、第一校舎付近で隊形を整え、同八時二三分ころ法政大学正門を出発し、同二七分ころ前田建設付近にさしかゝるまでの間においては、人を殺傷する能力を備えていても、社会通念に照らし、人の視聴覚上直ちに危険性を感ぜしめるものとは未だいえず、これを直ちに兇器とみなすことはできない。しかしながら、少なくとも、同二七分ころ学生集団が前田建設正門前付近で青木葉署長らと接触し、うち一部の学生が同署長らに本件『角材の柄付きプラカード』で殴りかかった段階(前記第三、(18)ないし(20))においては、客観的状況からして右物件はプラカードとして使用されるのではなく、闘争の際に使用される意図が明らかに外部的に覚知され、社会通念に照らし人の視聴覚上直ちに危険性を感ぜしめる状態になったものと思料され、右段階において本件物件は兇器性を帯有するにいたったものといわなければならない。」

 

としました。

 

前回も述べましたが、やはり、物そのものの危険性というよりも人に危害が加わる可能性との距離によって、罪名の成立の有無が変わってくるのだろうと思います。

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