凶器準備集合罪とダンプカー

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弁護士の佐藤です。

 

さて、前回まで傷害罪ないし同時傷害等の規定をみてきましたが、本日は、凶器準備集合罪という規定についてみていきたいと思います。

 

聞きなれない罪名かと思いますが、刑法208条の3は

  1. 2人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
  2. 前項の場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って人を集合させた者は、3年以下の懲役に処する。

と規定し、凶器を準備している状態を犯罪として定めているわけです。

そこで、本日は、その凶器性が問題となった事案をご紹介します。

事案は、いわゆる暴力団相互の対立抗争に関連し、被告人ら所属の組員が相手方暴力団員の襲撃に備え、自派の事務所にけん銃、日本刀などを準備したほか、右事務所付近の路上に組員の乗つたダンプカーを駐車させて置き、相手方が乗用者で襲来した際には、このダンプカーを相手車両に衝突させるべく待機していたというものであり、このダンプカーが凶器といえるかが争点となり、最高裁まで争われました。

 

この点は、まず、控訴審は、

「本件ダンプカーは大型貨物自動車の部類に属し、その大きさ、形状、馬力に照らし、之を走行させて目的物に衝突せしめれば、人を殺傷し、或いは普通乗用自動車等を破壊するに十分な能力を備えていることが明らかであるところ、被告人らは、・・・・ダンプカーを・・・事務所前道路の北寄に南を向けておき、組員二名を乗車させ、エンジンをかけたまま待機していたことが認められるので、このような状況でダンプカーを準備したことは、これを刑法二〇八条の二にいう兇器を準備しに当ると解することが相当」(注、当時の凶器準備集合罪は、刑法208条の2に規定されていました。)

 

と判示し、凶器性を認めました。

 

これに対し、最高裁判所昭和47年3月14日判決は、

 

「原判決は、被告人らが他人を殺傷する用具として利用する意図のもとに原判示ダンプカ―を準備していたものであるとの事実を確定し、ただちに、右ダンプカーが刑法二〇八条ノ二にいう『兇器』にあたるとしているが、原審認定の具体的事情のもとにおいては、右ダンプカーが人を殺傷する用具として利用される外観を呈していたものとはいえず、社会通念に照らし、ただちに他人をして危険感をいだかせるに足りるものとはいえないのであるから、原判示ダンプカーは、未だ、同条にいう『兇器』にあたらないものと解するのが相当である。これと異なる判断をした原判決には、右『兇器』についての解釈適用を誤つた違法があるが、原判決の維持する第一審判決によれば、被告人らは、右ダンプカーのほか、けん銃、日本刀などの兇器の準備があることを知つて集合したというのであるから、右ダンプカーを除いても、被告人につき同条所定の兇器準備集合罪が成立するのであり、原判決の右違法は判決に影響を及ぼすものとは認められない。」

 

と判示し、大阪高裁とは異なる判断を示しました。

 

難しいところですが、最高裁も、あらゆる場合にもダンプカーの凶器性を否定するという趣旨ではなく、具体的事情を事実認定し、その事情のもと凶器性を否定したものと思われます。

 

結局は、その物と人に危害が加わる距離感によってかわってくるのかと思われます。

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