兇器準備集合罪の共謀共同正犯の成否

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弁護士の佐藤です。

 

さて、本日も刑法のうち、凶器準備集合罪に関する判例をご紹介しますが、本日は浅草橋事件とよばれる判例をご紹介します。

 

まず、事案ですが、昭和60年11月29日、いわゆる中核派の構成員及び同調者約100人が、多数の鉄パイプ及び火炎びんを用意して、当時の国鉄浅草橋駅を襲撃し、駅構内にガソリンと灯油の混合油を撒き、火炎びんでこれに点火して、駅舎建物の一部を焼椴させたことから、右襲撃に参加し又は参加しようとした合計47人が現住建造物放火罪、兇器準備集合罪等により起訴された事件です。そして、本判決を受けた被告人11人のうち4人は実行行為に加わる前に、他の7人も右駅に赴く前に、それぞれ現行犯人として逮捕されたため、右駅の襲撃には直接参加していません。そのため、被告人全員についての右駅舎内等における兇器準備集合罪の共謀共同正犯の成否が争点として争われました。

 

この点、昭和63年3月17日東京地方裁判所判決は、

 

「被告人A、同F、同G及び同Jは、多数の行動隊員が小公園脇路地で武装を始めたころ、右隊員らと同じ服装装備をして右路地のすぐ近くまで来たところを警察官に発見されて逃走したのであるから、前記認定の中核派の拠点において、同派の幹部の者から本件犯行計画についての説明と、本件当日の服装装備、集合方法、浅草橋駅襲撃の手順等についでの指示を受け、これに従い、同駅襲撃の行動隊の一員として、本件当日右拠点を出て小公園脇路地の近くまで来たものであることが明らかである。そうすると、同被告人らは、たまたま集結場所に至る寸前に警察官に発見されて逮捕されたため実行行為に出なかつたものの、自らも本件各犯行を実現しようとする意思を持つて行動し、他の行動隊員の実行行為を通してその意思を実現したと認めるのに十分であるから、本件各犯行のすべてについて共謀共同正犯の刑責を免れることができない。」

 

とし、さらに、

「次に、被告人C及び同Dは、行動隊員と同じ服装装備をして、武装した行動隊員が小公園脇路地を出発するまでその場所に滞留し、被告人B、同E、同H及び同Kは、破壊放火部隊の一員として、小公園脇路地から浅草橋駅に向かつて火炎びんを運搬し、さらに、被告人Iは、兇器及び資材の運搬役として、ワゴン車を運転して本件多数の鉄パイプ、火炎びん等を小公園脇路地に運び込んだのであるから、いずれもその間に行われた兇器準備集合罪について実行正犯が成立することが明らかである。また、右被告人らは、前記の事情によりいずれもその後行われた犯行の実行行為には加わつていないが、それ以前において本件犯行の一部の実行行為に出ていたのであるから、あらかじめ指示された役割に従い、自ら本件各犯行を実現し又は他の行動隊員の実行行為を通じて本件各犯行を実現しようとする意思のあつたことが明らかである。したがつて、右被告人らは、武装集団から離れた後に他の者のした兇器準備集合、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反及び現住建造物等放火の犯行についても共謀共同正犯の刑責を負わなければならない。」

 

として、共謀共同正犯の成立を認めました。

 

そして、「兇器準備集合罪は共同加害目的を有する者が集合した場合にのみ成立する自手犯と解すべきであるから同罪につき共謀共同正犯が成立することはありえないと主張する。右の所論は、兇器準備集合罪におけるいわゆる共同加害の目的を他と共同して自らも加害行為に出る目的と限定して解したうえ、同罪はその目的をもつて集合した者のみを対象とし、共謀共同正犯の成立を認めない趣旨の身分犯の規定であると解するものと思われる。」

 

という弁護人の主張に対しては、

 

「なるほど、規定には『二人以上ノ者』が『共同シテ害ヲ加フル』目的をもつて集合した場合と定められているのであるから、二人以上の者が共同して加害行為に出る目的で集合したという客観的事実は存在しなければならない。また、規定の構成上、兇器準備集合罪の正犯となる『集合シタル者』は『共同シテ害ヲ加フル目的ヲ以テ集合シタル』者に含まれると解すべきであるから、集合した者にも『共同シテ害ヲ加フル目的』が存在しなければならない。しかし、このことは、共同加害の目的を他と共同して自らも加害行為に出る目的と解すべき根拠となるものではなく、集合した者のうちの二人以上の者において共同して加害行為に出ることを認識していることを要すると解すべき根拠となるにとどまる。そして、この解釈は、兇器準備集合罪が共同加害の危険をはらみ、かつ、兇器の準備されている集合体にそのことを知りつつ参加する行為を共同加害の危険性と社会不安とを増大させる行為とみてこれを禁圧する趣旨で規定されたことに適合するばかりか、一般に将来の行為又は結果を内容とする目的犯の目的について、その行為又は結果が発生することの認識(予見)をもつて足りると解さていることとも調和する。このように解すると、兇器準備集合罪は、共謀により共同実行することが可能な犯罪であることが明らかである。」

として、弁護人の主張を退けています。

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