偽計による監禁罪の成否

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弁護士の佐藤です。

 

今週もはじまりました。

 

さて、本日も刑法に関する判例のうち、逮捕監禁罪に関する判例をご紹介していきますが、本件は偽計、つまり騙す行為によって逮捕監禁罪が成立するかが問題となった事案をご紹介します。

事案としては、被告人は、接客婦として雇い入れた女性が逃走したため、同女を被告人宅まで連れ戻そうと企て、A地点で女性の母が入院中の病院へ連れていくと誤信させ、あらかじめ被告人宅まで直行するよういいふくめて雇った男のタクシーに乗せました。タクシーはB地点までの約12キロメートルを時速40キロメートルで疾走したが、病院へ行くにはB地点で左折すべきであるのに左折しなかったため、女性は騙されたことに気づき停車を求めました。しかし、被告人は、そのまま被告人宅へ直行するよう要求したため、措置に迷った運転手が時速約25キロメートルに減速して運行中、女性はB地点から約150メートル離れたC地点の派出所付近で社外に逃げ出しました。

 

この点、被害女性は車に乗り込んだ時点では、監禁されたことに気づいておりません。そこでこの場合にも、監禁罪は成立するのでしょうか。

 

この点、第一審は、A地点からC地点までの監禁罪を認め、控訴審も支持をしました。

そして、被告人が上告し、最高裁の判断がでることになりました。

 

昭和33年3月19日最高裁判所判決は、

 

「刑法二二〇条一項にいう「監禁」とは、人を一定の区域場所から脱出できないようにして尾の自由を拘束することをいい、その方法は、必ずしも所論のように暴行又は脅迫による場合のみに限らず、偽計によつて被害者の錯誤を利用する場合をも含むものと解するを相当とする。されば、原判決が右と同旨に出で、第一審判決第三摘示の被告人の所為を不法監禁罪に当たるとしたのはまことに正当である。それ故所論はその実質においても理由がない。また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。」

 

として、偽計によっても監禁罪の成否に影響を及ぼさず、第1審、控訴審の判断を支持しました。

学説上は、現実的可能説といい、移動できる自由を現実的に侵害させることを要件とするので、被害者に監禁の認識がない以上、監禁罪は成立しませんが、可能的自由説では、可能性はあれば足りるので、判例と同様の判断になります。判例は他の事案でも一貫して可能的自由説をとっております。

 

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