保険金詐欺目的の暴行と傷害罪

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弁護士の佐藤です。

 

今週もあっというまに金曜になってしまいました。

 

先日、来年の手帳を購入し、今年ものこりわずかになってきたなあとしみじみしてしまいます。

 

で、本日も刑法に関する判例をご紹介しますが、本日は、保険金詐欺目的で傷害を受けることに同意をした場合、傷害罪は成立するのかという判例をご紹介します。

 

どういうことかといいますと、事案は、追突事故で4名に安静加療3週間から三ケ月のむち打ち損傷を負わせたとして懲役8月(執行猶予3年)に処せられた者が、やがて事故が保険金(入院給付金)騙取を目的とした故意の追突事件であることが発覚し、保険金詐欺を理由に懲役刑に処せられたというものです。

そこで、その者は、追突が過失によるものでないから業務上過失傷害罪は成立せず、また、故意による衝突であるとしても身体傷害の点について被害者の承諾があるから傷害罪にもならないと主張して、刑訴法435条6号の規定に基づき再審を申し立てるに至ったという再審事件です。

 

この点、最高裁昭和55年11月13日決定は、傷害に同意がある場合に、傷害罪が成立するかどうかの判断として、

「被害者が身体傷害を承諾したばあいに傷害罪が成立するか否かは、単に承諾が存在するという事実だけでなく、右承諾を得た動機、目的、身体傷害の手段、方法、損傷の部位、程度など諸般の事情を照らし合せて決すべきものである」

としたうえで、

本件については、

「本件のように、過失による自動車衝突事故であるかのように装い保険金を騙取する目的をもつて、被害者の承諾を得てその者に故意に自己の運転する自動車を衝突させて傷害を負わせたばあいには、右承諾は、保険金を騙取するという違法な目的に利用するために得られた違法なものであつて、これによつて当該傷害行為の違法性を阻却するものではないと解するのが相当である。」

 

とし、

 

最終的には、

 

「したがつて本件は、原判決の認めた業務上過失傷害罪にかえて重い傷害罪が成立することになるから、同法四三五条六号の『有罪の言渡を受けた者に対して無罪を言い渡し、又は原判決において認めた罪より軽い罪を認める』べきばあいにあたらないことが明らかである。」

として、再審の請求を退けました。

 

つまり、違法な目的に利用するために同意を得て傷害を負わせた場合は、傷害罪が成立するとしたのです。

同意傷害に関する判例はあまり多くなく、ちょっと専門的な話になりますが、被害者の承諾があった場合、同意殺人罪の規定がない以上、同意傷害というものは基本的には処罰されないものとされ、構成要件該当性を否定する学説、違法性を阻却するという学説があり、本判例は、違法性阻却説にたつものとなっております。

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