住居侵入罪と囲繞地

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弁護士の佐藤です。

 

そういえば、明日は休日です。

 

さて、本日も刑法に関する判例をご紹介しますが、前回まで誘拐罪に関する判例だったのに対し、本日から住居侵入罪に関する判例をみていきたいと思います。

 

前提として、住居侵入罪は、刑法130条は、

 

正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

と規定しています。

 

この罪名単体での裁判というのは少なく、窃盗罪や強盗罪とセットになって起訴されることが多いものといえます。

 

本日ご紹介する判例の事案は、被告人らが、ほか百数十名の学生らとともに、正門を閉鎖し通路を金網棚で遮断した上、部外者の立ち入りを禁止していた東京大学地震研究所構内へ、同所南側通路の金網棚を引き倒して乱入したとして、起訴されたというものです。

 

そして、本件は、東京大学構内の一隅に存在する地震研究所建物の周辺土地が、その囲繞地として建造物侵入罪の客体となるかどうかが争われました。

 

原審は、新設の金網柵と既存の門塀等を連結することによつて完成された囲障が、仮設的・一時的なものであることに着目し、右囲障設置以前における右土地部分に対する管理、利用状況を考察し、それが建物固有の排他的な敷地と認め難いとして、その囲繞地性を否定しました。

 

そして、昭和51年3月4日最高裁判所判決は、

 

「刑法一三〇条にいう『人の看守する建造物』とは、単に建物を指すばかりでなく、その囲繞地を含むものであつて、その建物の附属地として門塀を設けるなどして外部との交通を制限し、外来者がみだりに出入りすることを禁止している場所に故なく侵入すれば、建造物侵入罪が成立するものであることは、当裁判所の判例(昭和二四年(れ)第三四〇号同二五年九月二七日大法廷判決・刑集四巻九号一七八三頁、昭和四一年(あ)第一一二九号同四四年四月二日大法廷判決・刑集二三巻五号六八五頁)の示すところである。そして、このような囲繞地であるためには、その土地が、建物に接してその周辺に存在し、かつ、管理者が外部との境界に門塀等の囲障を設置することにより、建物の附属地として、建物利用のために供されるものであることが明示されれば足りるのであつて、右囲障が既存の門塀のほか金網柵が新設付加されることによつて完成されたものであつたとしても、右金網柵が通常の門塀に準じ外部との交通を阻止し得る程度の構造を有するものである以上、囲障の設置以前における右土地の管理、利用状況等からして、それが本来建物固有の敷地と認め得るものかどうか、また、囲障設備が仮設的構造をもち、その設置期間も初めから一時的なものとして予定されていたかどうかは問わないものと解するのが相当である。けだし、建物の囲繞地を刑法一三〇条の客体とするゆえんは、まさに右部分への侵入によつて建造物自体への侵入若しくはこれに準ずる程度に建造物利用の平穏が害され又は脅かされることからこれを保護しようとする趣旨にほかならないと解されるからである。この見地に立つて本件をみると、A建物の西側に設置されたC構内を外部から区画する塀、通用門(第一審判決のいう正門)及び南側に設置されたテニスコートの金網など既存の施設を利用し、これら施設相互間及びA建物との間の部分に、前記金網柵を構築してこれらを連結し、よつて完成された一連の障壁に囲まれるに至つた土地部分は、A建物のいわゆる囲繞地というべきであつて、その中に含まれる本件土地は、建造物侵入罪の客体にあたるといわなければならない。」

 

として、囲繞地を建造物侵入罪の客体となることを認めました。

 

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