人の数歩手前を狙って投石する行為と暴行罪

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弁護士の佐藤です。

 

さて、本日も刑法に関する判例をご紹介しますが、本日も前回同様暴行罪に関する判例をご紹介します。

 

前回も言いましたが、暴行罪に関する判例はたくさんあり、不法な有形力の行使という多様な解釈が成り立つ定義故に、成否が問題となった判例がたくさんあるのです。

 

本日は、人の数歩手前を狙って投石する行為が暴行といえるかどうかが争われた判例です。ポイントは、人に命中させるためではなく、驚かす目的で、人の数歩手前を狙って石を投げたという点です。

 

この点、東京高等裁判所昭和25年6月10日判決は、

 

 

「被告人・・・の投石は被害者・・・にこれを的中させる目的でなく同人を驚かしてやる目的で同人の五、六歩手前を狙つて投石した或は投石した石が・・・に当るかも知れないという程度の認識わあつたとしてもそれを否定する認識の方が相当強く働いて居ると見るべきであり認識ある過失と見るのが相当であるといい暴行の事実を否定するのであるが、暴行とは人に向つて不法なる物理的勢力を発揮することで、その物理的力が人の身体に接触することは必要でない。例えば人に向つて石を投じ又は棒を打ち下せば仮令石や棒が相手方の身体に触れないでも暴行は成立する。群衆の中に棒を揮つて飛込み暴れ廻われぱ人や物に衝らないでも暴行というに十分である。して見ると右暴行の結果石や棒が人の身体に衝りこれに傷を負わせることは暴行の観念から離れ傷害の観念に移行包攝せられるものというべきである。記録によると被告人等は同僚で仲良しである被害者・・・を驚かす目的で悪戲けて夜間同人に向うてその数歩手前を狙うて四五十米手前から投石したことが認められるが石は投げた所に止るものでなくはねて更に同方向に飛ぶ性質のものであるから数歩手前を狙つて投げても狗・・に向つて投石したといい得るし投石の動機がいたづらであつても又その目的が同人を驚かすことにあつても投石行為を適法ならしめるものでないから右被告人等の投石行為は・・に向つて不法の物理的勢力を発揮したもの即ち暴行を為したものといい得る。而して傷害罪は暴行がありその結果傷害が生ずれば即ち成立し傷害の結果に対して認識することを要しないことは已に幾多の判例の示すところであるから仮令被告等がその投石が・・には衝らないであろうと予想していたとしても、これは傷害の結果に対する認識に関することで傷害罪の成立には影響がない。論旨は投石の場合その人が身体に衝るまでを暴行の観念に包合せられるものとし被告人等に石が・・に衝ることを予想しなかつた理由で暴行の意思を否定するのであるが右の理由からしてこれを採用しない。但し右の予想なきことは犯罪の成立には影響ないとしても犯情には重大なる差異を生ずるものであるが記録によると被告人等には投石が・・に衝るかも知れぬという未必の故意があつたものと認められる。原審公判廷において被告人等はこの点を否定しているが人に向つてその数歩手前に投石すれば或は人に衝るかも知れぬと予想するのが常例であり特別の事情なき限り衝らないと思うとは条理に反し探用し難い。論旨はそれ故に理由がない。」

とし、暴行罪の成立を認め、驚かすも目的であったという点は暴行罪の成否に関係なく、犯情に影響を及ぼすことにとどめました。

 

 

古い判例で、具体的な事実関係まで把握できていないのでなんとも言えませんが、被害者と石が投げられた距離によっては、暴行罪が否定させるため、その距離が一番の要素であったのかと思われます。

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