交通事故被害者の放置

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弁護士の佐藤です。

さて、本日も刑法に関する判例をご紹介しますが、前回、保護責任者遺棄罪の成否に関する判例をご紹介しましたが、本日も同様に保護責任者遺棄に関する判例を。

前回は、嬰児に関する医療の場ですが、本日は、交通事故の被害者に関する判例です。

 

まず、おさらいですが、刑法218条は、

年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の懲役に処する。

と規定しています。

そして、本日の事案は、自動車の操縦中、過失に因り通行人に約3箇月の入院加療を要する歩行不能の重傷を負わしめながら道路交通取締法、同法施行令に定める被害者の救護措置を講ずることなく、被害者を自動車に乗せて事故現場を離れ、折柄降雪中の薄暗い車道上まで運び、医者を呼んで来てやる旨申し欺いて被害者を自動車から下ろし、同人を同所に放置したまま自動車を操縦して同所を立ち去つたもので、この場合に、道路交通取締法違反(被害者救護義務違反)罪のほかに要保護者遺棄罪(刑法第218条)が成立するかというものです。

この点、最高裁昭和34年7月24日判決は、

「車馬等の交通に因り人の殺傷があつた場合には、当該車馬等の操縦者は、直ちに被害者の救護その他必要な措置を講ずる義務があり、これらの措置を終り且つ警察官の指示を受けてからでなければ車馬等の操縦を継続し又は現場を立去ることを許されないのであるから(道路交通取締法二四条、同法施行令六七条)、本件の如く自動車の操縦中過失に因り通行人に自動車を接触させて同人を路上に顛倒せしめ、約三箇月の入院加療を要する顔面打撲擦傷及び左下腿開放性骨折の重傷を負わせ歩行不能に至らしめたときは、かかる自動車操縦者は法令により「病者ヲ保護ス可キ責任アル者」に該当するものというべく、原審が本件につき刑法二一八条をも適用処断したことはまことに正当であり、且つこの点についての原判示はむしろ論旨引用の判例と同趣旨のものであつて論旨はすべて理由がない。」

と判示し、前述した条文のうち、「病者を保護する責任のある者」に該当するとして、刑法218条の成立を認めました。

最高裁は、保護責任者遺棄罪が成立する理由として、「当該車馬等の操縦者は、直ちに被害者の救護その他必要な措置を講ずる義務があり、これらの措置を終り且つ警察官の指示を受けてからでなければ車馬等の操縦を継続し又は現場を立去ることを許されない」という理由のみしかあげていませんが、この理屈でいうと、ひき逃げ事案はすべて保護責任者遺棄が成立することにも思えます。

実際には、被告人が、一旦自分の自動車に被害者を乗せ、その後自動車から引き出したという、一旦事故の支配下に被害者をおいた点を重くみているのではないかと思われます。

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