交通事故問題4~逸失利益について~

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弁護士の佐藤です。

さて、少し時間があいてしまいしたが、本日も交通事故問題についてです。

本日は、前回同様、消極損害のうち、逸失利益についてお話します。

 逸失利益には、後遺障害のよる逸失利益と死亡による逸失利益があります。

 後遺障害による逸失利益とは、治療の甲斐無く、交通事故によって体に障害が残ってしまったが故に、将来にむかって収入が減収することをいいます。休業損害と異なるのは、休業損害が、症状固定(治療の必要がなくなること、あるいは、治療をしてもこれ以上改善しないこと)までの損害であるのに対し、逸失利益は、症状固定後の将来の損害を言います。

 将来の損害をどのように出すのかといいますと、これは実務では計算式が決まっておりまして、

 基礎収入額(年額)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

 という式になります。

 わかりにくい単語がならんでおりますが、労働能力喪失率とは、交通事故のよる後遺障害によって、将来どれくらいの労働能力が喪失されたのかという割合を示すものであり、後遺障害の等級によって異なります。実務では、1級から3級が100%、7級は56%、12級は14%、14級は5%と定められておりますが、被害者の職業、年齢、性別、後遺症の部位等を総合的に判断して評価することになります。

 次に、労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数ですが、労働能力喪失期間とは、将来収入が得られるであろう期間をいつまでとするかというものであり、通常は症状固定時から67歳までとされています。もっとも、実務ではすべての等級において、67歳までの期間認めてくれるわけではなく、12級であれば10年間程度、14級であれば5年間制限する例が多く見られます。しかし、これも絶対的な基準ではなく、具体的な事情に応じて変わるものであります。

 続いて、ライプニッツ係数が一番耳慣れない言葉だと思います。ライプニッツ係数とは、中間利息控除の計算を簡易に行うために用いられる係数のことです。もっとわかりにくくなったかもしれません、、、。簡単に説明すると、前述のとおり、逸失利益とは交通事故によって、将来にわたって発生する損害です。それを交通事故のよる示談時にまとめて損害賠償を受ける事になりますので、利息分を余計に受け取る事となってしまいます。つまり、お金は、所持していれば、だんだんと利息がついて増えるものだという考えを前提に、将来の損害を示談時に先払いしてもらうため、その利息分を差し引かないともらいすぎになってしまうと考えられているのです。そこで利息分を余計に受け取らないように、中間利息を控除した金額を計算する必要があるのです。そのために用いられているのがライプニッツ係数です。例えば労働能力喪失期間が10年の場合、対応するライプニッツ係数は7.7217となりますので、損害が10万円でしたら、受け取る金額は7万7217円という事になります。

 以上により、例えば、交通事故の被害者が、症状固定時の年齢が57歳で、年収500万円の男性で、後遺障害の等級が7級(前述したとおり、7級の場合、労働能力喪失率は56%でした)であった場合、労働能力喪失期間は10年となりますから、

 500万円×0.56×7.7217=2162万0760円

となります。

 最後に、交通事故により、不幸にも被害者が死亡してしまった場合、死亡による逸失利益はどのように計算するのでしょうか。

 この場合にも、後遺障害による逸失利益と基本的な考え方は同じです。

 計算方式は、

 基礎収入額×(1-生活費控除率)×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

 しかし、後遺障害による逸失利益の場合とは異なり、死亡による逸失利益の場合は、労働能力喪失率は問題になりません。死亡により、労働能力は完全に失われているからです。

 もっとも、死亡による逸失利益の場合には、生活費控除率という言葉が出てきます。これも耳慣れない言葉ですが、生活費控除率というのは、被害者は、交通事故に遭わなければ、将来的に収入を得られたはずですが、他方、一定金額の生活費を支出するはずです。しかし、交通事故により死亡してしまったことで、将来的に生活費を支出しないことが確定します。そこで、被害者が支払いを免れた金額はある以上、損害額を算定する際にはその部分を控除するとされているのです。

生活費控除率は、被害者が、

・一家の支柱で被扶養者が1人の場合、40%

・一家の支柱で被扶養者が2人以上の場合、30%

・女性の場合(扶養者なし)、30%

・男性の場合(扶養者なし)、50%

とされています。

 つまり、例えば、交通事故の被害者が、57歳で、年収500万円の男性で、被扶養者が1名であった場合、労働能力喪失期間は10年、生活費控除率は40%となりますから、

 500万円×(1-0.4)×7.7217=2702万5950円

 となります。

 

以上が逸失利益についてのお話になりますが、上記のとおり、計算式は非常にわかりにくく、また、前述のとおり、具体的事例によっては形式的に数字を当てはめるだけでは不十分な場合もあります。ご不明な点がありましたら、お気軽に当事務所にご相談ください。

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