二項強盗罪2

037

弁護士の佐藤です。

 

今週もはじまりました。

 

先日、とある裁判の和解期日で、久しぶりに、現金の席上交付といって、相手方が解決金を裁判所にもってきて、わたしがそれを数えるということをやってきました。

 

通常は振込なので、あまり現金を数えるということになれてなく、しかも、数え間違いがあると責任問題となるので、ちょっと変な緊張がありました。

 

さて、本日も刑法に関する判例をご紹介します。

 

本日も二項強盗に関する事案です。

 

どのような事案かといいますと、被告人が、A子との間で、A子の両親を殺害して右両名の全財産につき唯一の相続人であるA子に相続を開始させて財産上不法の利益を得るとともに、現場にある現金等を強取する旨の共謀を遂げ、右計画を実行に移すべく、深夜右両名方に赴き就寝中の両名にカッターナイフで切りつけるなどの犯行に及んだが、右両名に激しく抵抗されたため、傷害を負わせたにとどまり、財産上不法の利益はもとより金品強取にも至らなかったというものです。

 

この点、一審判決は、相続による被相続人の財産の承継によって実際に相続人が承継するのは、被相続人の所有する不動産や預金等具体的な物や権利であるから、相続による被相続人の財産の承継は具体的な財物及び利益の総体として「財産上不法の利益」と評価することができるとして、2項強盗の成立をも認めた。

 

これに対して、異なる判断を示したのが、控訴審である東京高等裁判所平成元年2月27日判決です。

 

上記判決は、

 

「刑法二三六条二項の強盗は、暴行、脅迫によって被害者の反抗を抑圧した上、その意に反して不法に財産上の利益を得ることを、同条一項所定の財物の強取に匹敵すると評価し、これと同様に処罰しようとするものであるから、その対象となる財産上の利益は、財物の場合と同様、反抗を抑圧されていない状態において被害者が任意に処分できるものであることを要すると解すべきところ、現行法上、相続の開始による財産の承継は、生前の意志に基づく遺贈あるいは死因贈与等とも異なり、人の死亡を唯一の原因として発生するもので、その間任意の処分の観念を容れる余地がないから、同条二項にいう財産上の利益には当たらない。それ故、相続人となるべき者が自己のため相続を開始させる意図のもとに被相続人を殺害した場合であっても、強盗殺人罪に問擬するのではなく、単純な殺人罪をもって論ずべきであり、右の意図は極めて悪質な動機として情状の上で考慮すれば足りるのである。」

 

とし、

「原審は、相続により財産権が移転する面のみを重く見すぎた結果、刑法二三六条二項の解釈を誤り、そのため、動機に過ぎない事実を同条項の犯罪構成要件を充足する事実として訴因に付加することを許可した上、この点を含めて事実を認定判示し、その全部につき強盗殺人未遂の法条を適用処断したのであって、付加された訴因の重大性に鑑み、右の各違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。」

 

原判決は破棄し、差し戻しました。

 

本件判決の事案の場合に、強盗殺人罪が成立するか否かについても、学説上、様々な対立があるところですが、一般的に考えると、わたしは、相続財産の取得意思の有無は、殺人の動機にすぎず、犯罪の構成要件とはなりえないと思っております。

ページの先頭へ