二項強盗罪

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弁護士の佐藤です。

 

水曜日です。週の半ばはなかなかしんどいものがあります。

 

さて、本日も刑法に関する判例を見ていきますが、今回も強盗罪ですが、今回は、二項強盗とよばれているものです。

 

前にもお話しましたが、前提として、強盗罪を規定する刑法236条は、

 

  1. 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
  2. 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

 

と規定しています。そして、二項とみると、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた場合も同様とし、現金や物あけでなく、利益を得た場合も強盗罪が成立するとしているのです。

 

そして、今回ご紹介する判例はの事案は、高額の債務の支払いを免れる目的で債権者を殺害するとともに現金を強奪した被告人につき、右債務相当額の財産上不法の利益の取得が認められるかどうかが争われた事案というものです。

 

何が問題かというと、債権をもっていれば、債権者の死亡により、その債権は、相続人に相続され、相続人が権利行使をすることとなります。つまり、相続人がいる以上、不法の利益を得たといえないのではないかということです。

 

この点、昭和59年11月28日大阪高等裁判所判決は、

 

「債務者が債務の支払いを免れる目的で債権者を殺害した場合において、右殺害の結果、債権の相続人等においてこれを行使することが不可能もしくは著しく困難になつたときは、債務者が、債権者による債務免除の処分行為を得たのと実質上同視しうる現実の利益を得たという意味において、財産上不法の利益を得たと認めうるのは当然である。しかし、債権者を殺害することにより債務者が財産上不法の利益を得たと認めうるのを、右の場合のみに限定するのは、やや狭きに失して妥当でない。なぜなら、たとえば、債務者が、履行期の到来し又は切迫している債務の債務者を殺害したときは、債権者自身による追及を絶対的に免れるだけでなく、債権の相続人等による速やかな債権の行使をも、当分の間不可能ならしめて、債務者による相当期間の支払猶予の処分行為を得たのと実質上同視しうる現実の利益を得ることになるのであつて、かかる利益を、刑法二三六条二項にいう『財産上不法ノ利益』から除外すべき理由は見当らないからである。かくして、当裁判所は、債務者が債務の支払いを免れる目的で債務者を殺害した場合においては、相続人の不存在又は証憑書類の不備等のため、債務者側による債権の行使を不可能もしくは著しく困難ならしめたときのほか、履行期の到来又は切迫等のため、債権者側による速やかな債権の行使を相当期間不可能ならしめたときにも、財産上不法の利益を得たと認めうるものと解する。これに対し、検察官は、債務者が債務の支払いを免れる目的で債権者を殺害し、債権者自身による債権の行使を事実上不可能ならしめたときは、そのこと自体によつて、財産上不法の利益を得たと解すべきであるとして、判例(最高裁昭和三五年八月三〇日判決・刑集一四巻一〇号一四一八頁)を引用する。しかし、債務者が債務の支払いを免れる目的で債務者を殺害し、これによつて債権者自身による債権の行使を免れたとしても、相続人等が履行期の到来後直ちに右債権を行使することに何らの支障を来たさないような場合についてまで、債務者が財産上不法の利益を得たと解するのは、明らかに広きに失する。もつとも、検察官引用の右判例及び最高裁昭三二年九月一三日判決・刑集一一巻九号二二六三頁は、その主張に副うもののように理解できないではないか、これらは、いずれも、債務者が債権者を殺害することによつて債務の支払いを窮極的に免れることの確実な事案に関するものであり、債権の支払いを免れる目的で債権者を殺害しさえすれば、そのこと自体によつて常に必ず財産上不法の利益を得たことになるとの趣旨まで含むものとは解されない。」

とし、条件付きで二項強盗罪の成立を認めました。

 

司法試験勉強時代によく勉強した論点であり、債務を免れる目的により債権者を殺害した場合に、直ちに刑法236条2項にいう「財産上不法ノ利益」の移転があったと認めうるかどうかは、判例・学説上争いのあるところです。

上記判例で、検察官が主張したとおり、条件に関係なく二項強盗を認めることに関しては学説から強い批判がありますが、本判例で示す「債権の行使を相等期間不可能ならしめた」という条件がやや抽象的すぎ、さらなる議論が必要といえる判例とえいます。

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