事後強盗~窃盗の機会~

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弁護士の佐藤です。

 

本日は朝一でとある事件の現地調査にいってきました。最近、極力、事件によっては現地に一度は調査をするようにしています。話を聞いているだけ、写真をみているだけではなかなかわからない新たな発見、発想、思いが生まれたりするので、大事なことです。

 

午後は、家事調停、その後、公証人との勉強会、交通事故に関する研修会となかなかハードな1日です。

 

さて、本日も刑法に関する判例のうち、事後強盗に関する判例をご紹介します。

事後強盗罪ですが、事後強盗罪は実質的に強盗と同視されるものなので、財物奪取と暴行・脅迫との間に密接な関連性が認められることが必要です。それゆえ、本罪の暴行・脅迫は「窃盗の機会」に行われなければならないといわれています。

 

本日は、この窃盗の機会といえるかどうかが争われた判例です。

事案は、窃盗犯人を現行犯逮捕した私人が右犯人を連れて警察に向う途中、逃走しようとした右犯人から果物ナイフで刺されるなどの暴行を受けて受傷したというもので、このナイフで刺す行為が窃盗の機会といえるかどうかが争点となりました。

 

この点、京都地方裁判所昭和51年10月15日判決は、

 

「事後強盗致傷罪が成立するためには、その手段たる暴行、脅迫が窃盗の現場或はその機会継続中になされたことを要する。と解すべきであるが、これを本件についてみると、当公判廷において取調べた各証拠によれば、・・・・は被告人の窃盗行為を発見すると同時にその腹部及び左頬を手拳で殴打し、よつて被告人の反抗を不能ならしめてこれを逮捕したが、その後は自室において被告人に対し自分と共に警察へ行くよう約一時間にわたつて説得を続け、被告人もようやくこれに応じて二人で山科警察署へ赴く途中、被告人が逃走するため・・に対して暴行を加えたこと、被告人は右のように一応警察へ行くことを承諾したものの全く逃走の意思を放棄したものではなく、又終始・・は被告人のそばに居て同人のもとから逃走することは必ずしも容易でない状況であつたことが認められる。」

 

としながら、

「他方・・は被告人を、その意に反して警察へ連行しようとする意思はなく、そのため前記のような長時間にわたる説得に努めたのであつて、その間、以前の窃盗について被告人を問い詰めるようなことはあつたものの前記暴行以外は被告人に対してその反抗或は逃走を防止するような行動をとることはなく、ことに一旦被告人が警察へ行くことを承諾した後は、同人が自室へ着替えをしに行くことにも快諾し、その後再び・・の部屋へ戻つた際、被告人の気を落ち着かせる為ウイスキーや煙草を勧め、被告人もこれに応じて・・と共にウイスキーを飲んだり煙草を喫つたりしていたこと、・・方を出て山科警察署へ赴く際も、・・は被告人の腕を掴む等その逃走を防止することもせず二人で並んで歩いて行つており、・・の友人の・・が二人を見ながらバイクで追い越して行つた際も、同人は二人の行動に何の異常をも認めなかつたこと、途中からはむしろ・・の方が被告人の数歩先を歩いて、これを先導するような状況であつたこと、被告人が・・に暴行を加えた時は窃盗行為から約七〇分経過し、その現場も窃盗現場から約二〇〇メートル離れた地点であつたことが認めらる。」

 

とし、

「以上の事実に照らせば、・・の当初の逮捕行為が本件暴行時まで継続していたとみるのは困難であつて、被告人が・・の説得に応諾した段階で逮捕状態は消滅したものとみられ、・・の警察への被告人の同行は有形力を用いないいわば任意の同行というべきものであり、しかも本件暴行が行われるまでに相当の時間的、場所的に隔たりがあるから、かかる状況のもとでは、たとい窃盗行為後警察への同行中に逃走のため暴行が加えられたとしても、その暴行はもはや窃盗の現場若しくは窃盗の機会継続中になされたものと解することは出来ず、従つて窃盗犯人が逮捕を免れるため暴行を加えた場合に当らないから、本件につき事後強盗致傷罪は成立しないものといわなければならない。」

 

として、結論として、窃盗と傷害の併合罪の成立を認めました。

 

窃盗の機会といえるかどうかは、単に窃盗行為との時間的、物理的距離感ではなく、両者の関係、その間の会話等、上記判例が上げるように細かい事実認定のもと、財物奪取と暴行・脅迫との間に密接な関連性を判断したものといえ、結論としては、本件は極めて妥当といえます。

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