事後強盗

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弁護士の佐藤です。

 

なんだかまた体の調子がおかしい・・・。

 

昼と夜の寒暖の差が影響しているのでしょうか・・。

来週はまた民事事件の尋問が控えており、体調管理は気を付けなければいけませんね・・。

 

で、本日も刑法に関する判例のうち、強盗罪に関する判例をご紹介しますが、本日は事後強盗罪と呼ばれるものです。

 

まず、事後強盗罪とはですが、刑法238条によって規定される犯罪で、窃盗をした者が、財物の取り返しを防ぐため、逮捕を免れるため、または、罪証隠滅のために、暴行・脅迫をすることを内容としています。

 

つまり、例えば、空き巣をするために、住居者不在の家に入ったのですが、たまたまその住居者が帰宅し、窃盗犯人を捕まえようとしました。そこで、窃盗犯人は、住居者に暴行を加え、逃走したとうような事案などといいます。

 

一応確認ですが、刑法238条は、

 

窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。

 

と規定しています。

 

そして、本日ご紹介する事案は、店舗内で窃盗を犯した被告人が、同店従業員に店舗外路上で逮捕されそうになった際、右手で同人の頚部をつかんで絞めあげるなどの暴行を加え傷害を負わせたとして(事後)強盗致傷罪で起訴された事案です。

 

この点、福岡地方裁判所昭和62年2月9日判決は、

 

「事後強盗罪における暴行の程度は、同罪が強盗をもつて論ぜられる以上、強盗罪におけると同程度のものであることを要するのであるが、強盗罪の暴行とはその目的、態様を異にすることから事後強盗罪にあつては、逮捕者の逮捕行為あるいは財物取還を図る者の財物取還行為を抑圧するに足りる程度の暴行であることを要すると解されるところ、被告人の本件暴行についてみるに、前掲の関係各証拠によれば、以下の事情が認められる。」

 

として、事後強盗罪の暴行脅迫の程度について言及し、本件では、

「本件暴行の現場は、銀行、会社事務所、飲食店等が密集して立ち並ぶ通称『天神西通り』沿いの歩道上で、昼夜を問わず交通量や人の往来が多く、本件犯行は八月一五日の午後三時五五分ころで、これを見守る車が停車し、周囲に人だかりができる状況であつた。」

であったこと、

「被害者・・は、判示コンビニエンス・ストアー『ABC』に昭和六〇年四月から勤務していたが、この間でも五、六回万引犯人を逮捕した経験を有し、被告人についても、以前に万引をした疑いを抱いていたため、犯行当日、被告人の姿を認めて事務所のドアの隙間から被告人の行動を注視し、万引をした確認が得られれば直ちに逮捕する態勢にあつたものであつて、同人が過去に空手の修業を積んでいたこととも相まつて、・・には被告人を逮捕するについて相当の自信と余裕があつたことが窺われる。」こと、

「判示第一の窃盗を現認した・・は、直ちに被告人を追い、同店から約一○メートル余りの歩道上で、サラミを持つていた被告人の右手を捕らえて停止を求めたが、被告人はサラミを左手に持ち替えて握りしめながら、右手で同人の襟元付近をつかんだうえ押し返すなどして逃れようとし、他方、・・もこれに動じることなく、右手で被告人の左肩付近の着衣を、左手で被告人の右手首付近をそれぞれつかみ、両者その態勢で組み合つたまま、数分の間、激しいもみ合いの状況となつたが、この間、・・は終始被告人を離そうとせず、被告人を押さえ付けるなどしながら通行人に警察への電話通報を依頼し、同人が現場住所の詳細がわからず・・に尋ねるや、その時現場に来た近くの飲食店の店長に電話を交替するよう指示するなど、被告人の逮捕に向けて的確に行動するとともに、最後まで被告人を自分ひとりで取り押さえる自信があつたことから、周囲の通行人らに積極的に加勢を求めることもなく、結局、被告人は前記態勢のまま・・ひとりに取り押さえられた形で逃走を断念せざるをえなかつた。」こと、

「・・はそのカッターシャツの襟元部分を一〇センチメートル余り破られ、前頸部に表皮剥離と皮下出血の挫傷を負つてはいるものの、その破損状況や受傷程度に加えて被告人も小樋からそのポロシャツの胸付近を破られていることなどに照らすと、これらは前記のような激しいもみ合いの過程で自然に生じたものとみられるのであつて、ことさら被告人が・・の頸部を絞めあげ、あるいは喉仏をつかむなどによつて生じたものとはいい難い。」

として、最終的に、

「右のような諸事情を総合考慮すると、被告人の本件暴行は、いまだ・・の逮捕行為、財物取還行為を抑圧するに足りる程度のものと認めるのは困難であるといわざるをえない。」

として、窃盗と傷害の併合罪とされました。

 

事後強盗罪も強盗罪として処理される以上、その暴行脅迫の程度は強盗罪と同じものを要求されて当然ですが、通常の強盗罪が物を奪うために積極的に行われる物に対し、事後強盗は逃れるための消極的側面を有しているため、質的に差異が生じてもおかしくありません。

 

実際、実務では、逮捕の理由が事後強盗でも、起訴段階では、窃盗と暴行の併合として処理されるケースも多いとの印象を持っています。

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