不動産に関する問題4~使用貸借について~

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弁護士の佐藤です。

本日も不動産に関するトラブルのお話ですが、本日は、不動産の使用貸借について簡単にご説明します。

使用貸借という言葉は、なかなかお聞きにならないかもしれませんが、要は、賃貸借というものが、有償、つまり対価を支払って、物を貸し借りする契約であるのに対し、それを無償、つまりタダで貸し借りをする契約というものが使用貸借と言います。

不動産の使用貸借というものは、私たちの生活の中で、実は多く存在しています。

その多くは親族間でのものといえるでしょう。

もともと、タダで土地、建物を貸し借りする関係なので、使用貸借契約の当事者の関係は当然、良好で、トラブルもそんなに発生しません。

やっかいなのは、当事者間に相続が発生したときです。使用貸借も物を使用する権利であるため、その点では、賃貸借と同じですが、使用貸借は、借主の死亡によって効力を失うため(民法599条)、賃貸借のように、相続の対象にはなりません。

したがって、使用貸借の借主が死亡したときは、問題はないのですが、貸主が死亡した場合、民法599条のような規定がないため、使用貸借は終了しません。

そして、この不動産をタダで貸している人を相続した人と、借主との間には、従前のような良好な関係ではないことも多く、この場合にトラブルが発生しやすいのです。

つまり、貸している人を相続した人からすれば、タダで不動産を使わせるなんでとんでもない、だとか、その不動産を自分が使用したい、売却したいと思うのです。

では、タダで貸しているのだから、いつでも返還を請求できるのでしょうか?

 この点に関しては、民法597条に規定があります。

  • 借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。
  • 当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる。
  • 当事者が返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも返還を請求することができる。

不動産に関する使用貸借では、契約に定めがあれば問題はなく、また、不動産の借主からすれば、使用及び収益の目的がない場合は想定しにくく、問題となるのは第2項、特にただし書のところだと思います。

では、この、「使用及び収益をするのに足りる期間を経過したとき」とはどういう場合をいうのでしょうか?

この点、最高裁は、経過した年月、土地が無償で貸借されるに至った特殊な事情、その後の当事者間の人的つながり、土地使用の目的、方法、程度、貸主の土地使用を必要とする緊要度など双方の諸事情を比較衡量して判断すべきものであるとしています(最高裁昭和45年10月16日判決)。

したがって、一概に何年ということはできず、双方の事情を考慮して判断することになります。

なお、使用貸借は、先程も述べたとおり、親族間の良好な関係のもとはじまるケースが多いため、契約書を作成していない場合は多いといえます。しかし、これまで再三お話してきましたが、そのときはよくても、後にトラブルとなることは十分に予想しえることです。

したがって、紛争を未然に防ぐという意味でも、なるべく契約書を作成するべきといえるでしょう。

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