メモの財物性

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弁護士の佐藤です。

 

今週ももう金曜日。今年もあと2週間程度・・・。

この年末のなんだかバタバタ、そわそわした感じがいつまでたっても好きになれません。

ちなみに、クリスマスも大嫌いです。

 

で、気をとりなおして、本日も刑法に関する判例のうち、前回に続き、窃盗罪の成否が問題となった判例をご紹介いたします。

本件は、スリ事案であり、被告人が被害者のズボンのポケットからメモ1枚を抜き取ったというものです。

一審である大阪地裁は、このメモの財物性を認め、窃盗既遂罪を認めました。

これに対し、大阪高等裁判所昭和43年3月4日判決は、

「財産犯の客体としての『財物』といいうるためには、交換価値ないし経済価値を有するか、または少なくとも主観的価値を有することを要し、したがつて、右いずれの価値をも有しない物が『財物』にあたらないことはもちろん、右いずれかの価値を有するとしても、その価値が極めて僅少で、いうに足りないような物も、また『財物』とはいいえないものと解するのが相当である。」

とし、物であれば、何が何でも財物性を認めるのではなく、交換価値ないし経済価値を融資、または少なくとも主観的価値を有するというものに限定し、

「そこで、被告人のすりとつた本件メモが右いずれかの価値を有するか否かについて考察するに、原判決挙示の各証拠によると、被告人がすりとつた本件メモは横約二一センチメートル縦的二七センチメートルの紙片であつて、特急『こだま』号四本の小田原から(行先は記載されていない)の発着時間と、英文の書物か詩の覚え書きらしきもの六行が記載されているにすぎないものであることが認められるので、それ自体から交換価値ないし経済的価値のないことがうかがいうるのである。しかも右証拠に証人・・・・の当番における供述を併せ考えると、本件犯行直後、被告人が現場付近で捨てた右メモを拾つた鉄道公安官・・某がこれを被害者・・・・に示して被害づけをしたうえ、警察官・・・において被告人を現行犯人として逮捕し、右メモを差押えたのであるが、その際・・・・は右差押えを了承し、還付を望む意思を表示しなかつたことが認められるので、右メモは、・・・・にとり、すでにその必要性を喪失していたものであつて、すなわち、主観的価値もないか、少くとも極めて僅少でいうに足りないものであつたと考えられる。そうだとすると、右メモは財産犯の客体としての『財物』には該当しないものというほかはない。してみれば、被告人は金品を窃取しようとして、・・・・のズボン右後ポケット内から『財物』でないメモ一枚を抜きとつたにとどまり、結局窃盗の目的を遂げなかつたものであるから、その行為は窃盗未遂罪を構成するにすぎないものであるのに、右メモを『財物』と認め、窃盗既遂の事実を認定し、刑法二三五条のみを適用して同法二三四条を適用しなかつた原判決は、事実を誤認し、ひいては法令の適用を誤つたものといわざるをえず、右事実誤認および法令の適用の誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決は破棄を免れない。この点の趣旨は理由がある。」

として、メモの財物性を否定し、被告人を窃盗未遂罪にとどめました。

 

前回、わたくしの経験上、財物性を広く認めるといいましたが、さすがに、主観的価値もないメモ1枚に財物性を認めるべきではなく、大阪地裁よりも大阪高裁の判断が妥当というべきでしょうし、そもそも、この事案で起訴されたことに違和感をおぼえますが、常習性があったのしょうか・・。

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