ゴルフ場のロストボールの窃取

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弁護士の佐藤です。

 

さて、本日も刑法に関する判例のうち、窃盗罪の成否が問題となった判例をみていきたいと思います。

 

前回、置き忘れた物の持ち去りが窃盗罪となるかいなかという占有に関する判例を紹介しましたが、今回も占有に関する事案です。

 

どういう事案かといいますと、被告人は、深夜ひそかにゴルフ場内へ侵入し、ウェットスーツを身にまとってウォーターハザードの中へ入り込み、熊手、網袋などの道具類を使って池の底から大量のロストボールを拾っていたというのです。本件の起訴事実は、昭和59年夏、3回にわたり、栃木県内にある3つの、ゴルフ場において、その人工池からロストボール合計約1300個を窃取したというものでした。

 

被告人は、ロストボールは無主物、つまり所有者がいないのであるから、窃盗罪は成立しないと主張しました。

 

この点に関し、初めて判断したのが、昭和62年4月10日最高裁判所判決です。

 

上記最高裁は、

 

「原判決の認定によれば、被告人らが本件各ゴルフ場内にある人工池の底から領得したゴルフボールは、いずれも、ゴルファーが誤つて同所に打ち込み放置したいわゆるロストボールであるが、ゴルフ場側においては、早晩その回収、再利用を予定していたというのである。右事実関係のもとにおいては、本件ゴルフボールは、無主物先占によるか権利の承継的な取得によるかは別として、いずれにせよゴルフ場側の所有に帰していたのであつて無主物ではなく、かつ、ゴルフ場の管理者においてこれを占有していたものというべきであるから、これが窃盗罪の客体になるとした原判断は、正当である。」

 

として、無主物先占、つまり、所有者のない動産(無主の動産)を所有の意思をもって占有することによって所有権を取得すること(民法第239条1項)によるか、承継的取得かの判断を示さず、ロストボールの所有権者をゴルフ場側とし、さらに、占有者もゴルフ場側とし、結論として窃盗罪の成立を認めました。

 

本件は、わざわざ被告人がゴルフボールを盗むために、ゴルフ場に忍び込んだという事案であり、窃盗罪成立の結論は当然であり妥当と思います。

 

もっとも、実際そのゴルフ場でプレーしているお客さんが、たまたまロストボールを見つけて、こっそり持ち帰ってしまったという場合はどうなのでしょう。

 

上記最高裁の理屈からすれば、窃盗罪の成立が認められそうですが、数個のロストボールの持ち去りは、ゴルフ場側が黙示に容認しているという見方もあるようです。

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