ちり紙13枚の財物性

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弁護士の佐藤です。

 

今週もバッタバッタとはじまりました。

 

で、本日も刑法に関する判例のうち、窃盗罪の成否が問題となった判例をみていきますが、本日も前回同様、財物性が問題となった判例をご紹介します。

前回がメモであったのに対し、今回はちり紙13枚です。

 

どういう事案かといいますと、被告人は昭和44年7月22日午後4時13分ころ東京都渋谷区の東急百貨店東横店7階に停止中のエレベーター内において、金員窃取の目的で被害者着用のズボン左後ポケット内に左手を差し入れ、同人所有の四つ折のちり紙13枚を抜き取つた直後警察官に発見されたため、金員窃取の目的を遂げなかったというものです。

 

そこで、メモ同様、ちり紙13枚の財物性が問題となったのです。つまち、財物性がなければ、被告人は窃盗既遂ではなく、窃盗に着手はしたけれども、目的をとげなかったということで未遂罪にとどまるのです。

 

この点、東京高等裁判所昭和45年4月6日判決は、

 

「刑法第二三五条の窃盗罪において奪取行為の客体となる財物とは、財産権とくに所有権の目的となりうべき物であつて、必ずしもそれが金銭的ないし経済的価値を有することを要しない(昭和二五年八月二九日第三小法廷判決・刑集四巻九号一五八五頁)が、それらの権利の客体として刑法上の保護に値する物をいうものと解すべきであるから、その物が社会通念にてらしなんらの主観的客観的価値を有しないか、またはその価値が極めて微小であつて刑法上の保護に値しないと認められる場合には、右財物に該当しないものというべく、従つて、そのような物を窃取しても、その行為は、窃盗既遂罪を構成しないものと解するのが相当である(明治四三年一○月一一日大審院判決・刑録一六輯一六二〇頁、昭和二六年三月一五日第一小法廷判決・刑集五巻四号五一二頁、昭和二八年九月一八日東京高等裁判所判決・時報四巻四号刑一一〇頁、昭和三六年七月四日東京高等裁判所判決・高刑集一四巻四号二四六頁参照)。」

 

とした上で、本件については、

 

「しかして、右ちり紙一三枚は、縦一七・五糎横二三・五糎で白色の薄い和紙(品質中等程度)を重ねて四つ折りにしたものであるが、内表側の三枚は破れてほとんど使用にたえず、その余の一〇枚もしわがより汚損が認められる古いものであることが認められるが、このようなちり紙の形状、品質、数量、用途および被害者がこれに対し特段の主観的使用価値を認めていたことを窺うに足りる証拠がないことに徴すれば、本件ちり紙は、その価値が微小であつて、刑法上の保護に値するものとは認め難いものであるから、被告人の本件所為は、前段説示にてらし窃盗(既遂)罪を構成することなく、金員窃取の目的を遂げなかつたものとして窃盗未遂罪を構成するに止まるものと解するのが相当である。しからば被告人の本件所為につき財物を窃取したものとして刑法第二三五条を適用処断した原判決は、事実誤認ないし同条の解釈適用を誤つた違法を犯したものであり、右誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるから破棄を免れない。論旨は結局理由がある。」

 

として、メモ同様、ちり紙の財物性を否定しました。

もっとも、上記判例は、ちり紙だからという理由で財物性を否定したわけではなく、その形状や枚数遺憾によっては、財物性が認められる可能性もあるものといえます。

 

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